購買力平価と為替レートの関係

ビッグマックと円とドルとマクドナルド

購買力平価は為替レートの長期的な変動の予測に使われます。通貨ペアの2国間の経済構造があまり変わらないと購買力平価と為替レートの関係も長期的にはあまり変わらないと予測します。為替レートが購買力平価から短期的に大きく離れた時には為替レートは購買力平価に長期的には戻ると予測します。

目次

絶対的購買力平価と相対的購買力平価

購買力平価の種類は絶対的購買力平価と相対的購買力平価があります。

絶対的購買力平価

絶対的購買力平価は異なる通貨の購買力が同じになる為替レートです。購買力とはある商品を買える通貨の数量です。例えば、世界中で売られている商品である、マクドナルドのビッグマックで考えてみます。アメリカで5ドル、日本で400円で売っているとします。1ドル80円であれば、アメリカと日本のビッグマックの価値は同じです。この為替レートを絶対的購買力平価といいます。絶対的購買力平価と為替レートの関係

相対的購買力平価

世の中にはたくさんの商品が存在し、商品ごとに絶対的購買力平価を計算するのは大変です。相対的購買力平価は商品全般をまとめて計算します。相対的購買力平価は商品の物価指数(インフレ指数)を使います。例えば、前年の商品全般の価格がアメリカが10ドル、日本が1,000円、購買力平価が1ドル100円とします。前年比の物価指数がアメリカで103、日本で101とします。これは商品全般の価格がアメリカでは3%上昇し、日本では1%上昇したという意味です。今年の商品全般の価格はアメリカが10.3ドル(10×103÷100)、日本が1,010円(1,000×101÷100)です。商品全般の価格が同じになる購買力平価は1ドル98.05円(1,010÷10.3)です。

物価指数は消費者物価指数、企業物価指数、輸出物価指数などがあります。消費者物価指数は消費者が買う商品、企業物価指数は企業間で売買される商品、輸出物価指数は輸出品が対象です。どの物価指数で相対的購買力平価を計算すべきかは、2国間の経済構造により異なります。

インフレ率が高い国の通貨は、購買力平価が下がるので為替レートは下がります。インフレ率の高い国は金利が高いことも多いので、高金利通貨の為替レートは注意が必要です。相対的購買力平価と為替レートの関係

為替レートが購買力平価に長期的に近づく理由

アメリカと日本のビッグマックの価値が違ったらどうなるのでしょうか?絶対的購買力平価の例と同様にビックマックがアメリカで5ドル、日本で400円で売っているとします。この時の絶対的購買力平価は1ドル80円です。為替レートが1ドル70円であれば、アメリカで350円で買えます。日本では400円なのでアメリカで買った方が50円安いです。アメリカで350円で買って、日本で400円で売れば50円の利益です。ビッグマックは現実的ではないですが、貿易商品は為替取引されます。この場合、円でドルを買うので円安になります。円安になると利益が減っていくので、為替取引は減っていきます。例えば、為替レートが1ドル75円まで円安になった場合、アメリカで375円で買って、日本で400円で売ると25円の利益です。1ドル70円の時よりも25円利益が減りました。最終的に為替レートが絶対的購買力平価と同じ1ドル80円になると利益がなくなります。利益がある程度ないと誰も円でドルを買わないので、為替レートは購買力平価に近づいたといえます。

貿易取引で上記のような利益を得るためにはコストも考えなければなりません。貿易取引のコストは関税、運賃、保険料などです。これらは為替レートを購買力平価に近づけにくくする要因です。

購買力平価からかい離した場合の裁定取引

為替レートは購買力平価から短期的に大きく離れることがあります。為替レートの変動要因は大きく分けると実需、投機、介入です。投機とは為替差益を狙った取引です。実需は買い切り、売り切りの取引ですが、投機は買い戻し、売り戻しの取引です。そのため、投機が少なくなると為替レートは購買力平価から大きく離れなくなります。

ドル円と購買力平価の関係

ドル円の購買力平価は長期的には下がっています。ドル円の為替レートは短期的には上下していますが、長期的には下がっています。ドル円の購買力平価と為替レートは長期的には連動しています。

ドル円の購買力平価は高い順に消費者物価指数、企業物価指数、輸出物価指数です。ドル円の為替レートは消費者物価指数より高くなってもすぐに戻っています。ドル円の為替レートは輸出物価指数より低くなっても戻っています。輸出物価指数を下回った後の為替レートの戻り方が鈍いのは、購買力平価が長期的に下落トレンドだからです。

ドル円の為替レートは1980年代の後半から2010年代の前半にかけて、おおむね輸出物価指数を下限、企業物価指数を上限として推移してきました。2010年代後半からはおおむね消費者物価指数を上限に推移しています。ドル円が推移する範囲が変わった理由は、日本の製造業の海外移転、科学技術の発展による産業構造の変化などです。今後も日米の経済構造の変化により、ドル円の推移範囲は変化します。

ドル円の為替レートと購買力平価

公益財団法人国際通貨研究所より引用

ビッグマックと円とドルとマクドナルド