ダウ理論の実用的な使い方

上昇トレンド

ダウ理論は、テクニカル分析の源流となる理論です。ダウ理論は、主要トレンドに乗っていく投資方法に適しています。ダウ理論は、株式市場の分析が源流ですが、現代では株式市場以外の多くの市場の分析で使用されています。主要なダウ理論は、下記の通りです。

ダウ理論は、19世紀後半にチャールズ・ダウ(Charles Henry Dow)がウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)に投稿した株式投資に関する記事が源流です。チャールズ・ダウの死後、1922年にウィリアム・ハミルトン(William Peter Hamilton)が「The stock market barometer with Charles Henry Dow 」、1932年にロバート・レア(Robert Rhea)が「The Dow Theory」を発売しました。

市場価格はファンダメンタルズを反映する

市場参加者は、ファンダメンタルズに基づいて取引します。ファンダメンタルズは、経済状態を判断するための基礎的指標です。ファンダメンタルズは、多くの種類があります。ファンダメンタルズに基づいた取引は、ファンダメンタルズの予測に基づいた取引を含みます。この取引の格言は、「噂で買って事実で売る」です。これは、買い材料のファンダメンタルズを予測して、ファンダメンタルズが公表される前の安い市場価格で買い、ファンダメンタルズが公表された後の高い市場価格で売る戦略です。例えば、ドル円の買い材料の経済指標を予測して、経済指標が公表される前の99円で買い、経済指標が公表された後の99.7円で売ります。多くの市場参加者が経済指標発表前に既に買っていると、経済指標発表後は一時的に上昇しますが、伸び悩みます。

経済指標の噂で買って事実で売るドル円の値動き

ファンダメンタルズの予測は、間違えることがあります。例えば、ファンダメンタルズの噂が流れ、市場参加者がこれに基づいて取引を行うと市場価格が一方向に動きます。この動きを見たテクニカルトレーダーは後続し、市場価格はさらに加速します。その後、この噂が嘘であったことが判明すると、これらの取引の反対売買が起き、市場価格は元の価格に戻ります。

このように市場価格は取引参加者のファンダメンタルズを反映するので、市場価格の分析に基づいた取引は、ファンダメンタルズに基づいた取引に近いといえます。つまり、テクニカル分析は、ファンダメンタルズ分析に近いです。

市場価格の動きは、主要トレンド、2次的な動き、日々の変動に分類される

市場価格の動きの種類は、主要トレンド、2次的な動き、日々の変動です。主要トレンドは、買いと売りの両方があります。主要トレンドは、長期的に買いまたは売りのどちらが優勢なのかがはっきりと分かる値動きです。買いの主要トレンドは、高値の切り上げと、安値の切り上げにより確定されます。売りの主要トレンドは、安値の切り下げと、高値の切り下げにより確定されます。主要トレンドは、多くの市場参加者の共通認識から生じます。主要トレンドが続く期間に決まりはありません。主要トレンドを短期間で意図的に変えることは難しいです。主要トレンドに乗っていく取引は、一般的な投資方法です。

2次的な動きは、主要トレンドの調整的な値動きです。2次的な動きは、過剰な共通認識が修正されたことを意味します。この値動きの幅の目安は、主要トレンドの3分の1から3分の2程度です。2次的な動きの末期は、方向感のない小さな値動きが発生します。この時は主要トレンドの発生を予測してポジションを取るチャンスです。

日々の変動は、その日の値動きだけでなく、数日以上の値動きを分析すると傾向がつかめます。この分析では、主要トレンドや2次的な動きの中での日々の変動の位置づけも同時に考えます。日々の変動は、2次的な動きの末期では調整的な値動きです。これは前の主要トレンドが再開することを意味します。日々の変動は、新しい主要トレンドになることもあります。これは新しい強いファンダメンタルズが市場参加者の意識を急変させることで生じます。

ドル円の買いの主要トレンドと2次的な動き

ドル円の買いの主要トレンドは、上記の図の通りです。まず、直近安値99円から直近高値101円まで急上昇しています。この期間を日々の変動で見ると、上昇傾向です。次に2次的な動きとして直近高値の101円から100円まで下落しています。この期間を日々の変動で見ると、下落傾向です。最後に100円で直近安値を切り上げ、直近高値の100円を超えたことで買いの主要トレンドが確定し、102円まで上昇しました。この期間を日々の変動で見ると、上昇傾向です。

ドル円の売りの主要トレンドと2次的な動き

ドル円の売りの主要トレンドは、上記の図の通りです。まず、直近高値101円から直近安値99円まで急落しています。この期間を日々の変動で見ると、下落傾向です。次に2次的な動きとして直近安値の99円から100円まで上昇しています。この期間を日々の変動で見ると、上昇傾向です。最後に100円で直近高値を切り下げ、直近安値の99円を超えたことで売りの主要トレンドが確定し、98円まで下落しました。この期間を日々の変動で見ると、下落傾向です。

主要トレンドの段階は、先行期、後続期、末期に分類される

主要トレンドの段階は、先行期、後続期、末期です。買いの主要トレンドの先行期は、売りの主要トレンドの末期と重なります。この時は、市場参加者のほとんどが将来の市場価格に関して過剰に悲観的です。そして、抜け目のない市場参加者は、売られすぎて安くなりすぎている市場価格で買います。買いの主要トレンドの後続期は、様子見していた市場参加者が、上昇し始めた市場価格を見て買います。この期間は、主要トレンドの中で一番上昇幅が大きいです。買いの主要トレンドの末期は、市場参加者のほとんどが将来の市場価格に関して過剰に楽観的です。そして、抜け目のない市場参加者は、買われすぎて高くなりすぎている市場価格で売ります。

売りの主要トレンドの先行期は、予測することが難しいです。この時は高値を更新しない期間が続き、売りのファンダメンタルが出始めた時ぐらいです。抜け目のない市場参加者は、この時に安全資産を買うか、リスク資産を先物で売ります。売りの主要トレンドの後続期は、楽観していた市場参加者が、急落する市場価格を見て売ります。この期間は、主要トレンドの中で一番下落幅が大きいです。売りの主要トレンドの末期は、上記の通りです。

相関性の高い市場価格は確認しなければならない

相関性の高い市場価格を確認することで、主要トレンドの信頼性を判断できます。例えば、ドル円とクロス円は相関関係が高いです。ドル円の主要トレンドが強い時に、クロス円の市場価格を確認し、これがドル円に似た値動きをしていればドル円の主要トレンドは本物だと判断できます。

リスクオンの時のドル円と豪ドル円の相関関係

リスクオンの時は円と豪ドルの相関性は高くなります。ドル円の買いの主要トレンドの信頼性を豪ドル円の値動きで判断します。まず、ドル円は直近安値99円から直近高値101円まで、豪ドル円は直近安値72円から直近高値76円まで急上昇しています。このことから米ドル、豪ドル、円の中で豪ドルが一番買われ、円が一番売られていることが分かります。これはリスクオンの時の典型的なパターンです。次に2次的な動きとしてドル円は直近高値の101円から100円まで、豪ドル円は直近高値の77円から76円まで下落しています。最後にドル円は100円で直近安値を切り上げ、直近高値の100円を超えたことで買いの主要トレンドが確定し、102円まで上昇しました。豪ドル円は76円で直近安値を切り上げ、直近高値の77円を超えたことで買いの主要トレンドが確定し、78円まで上昇しました。

主要トレンドは出来高で確認できる

出来高は売買が成立した数量です。主要トレンドの継続は、買いの主要トレンドの高値更新時、または売りの主要トレンドの安値更新時の出来高が大きいです。これは主要トレンドの継続を予測する市場参加者が多いことを意味します。2次的な動きは、直近の主要トレンドよりも出来高が小さいです。これは新しい主要トレンドでないことを意味します。新しい強いファンダメンタルズに基づいて発生する主要トレンドは、出来高がとても大きいです。FXの出来高は世界中の相対取引の合計です。これを毎日分析することは現実的ではありません。