FXのスプレッドは、アスク(ask)からビッド(bid)を引いて計算します。FXのスプレッドは、ドル円とクロス円は銭またはpips(price interest points)、その他の通貨ペアはpipsで表記されることがあります。1pipsは、ドル円とクロス円が0.01、その他の通貨ペアのほとんどが0.0001です。例えば、ドル円のスプレッドが0.003の場合、0.3銭または0.003pipsと表記します。ユーロドルのスプレッドが0.00003の場合、0.3pipsと表記します。
FX業者のビッドとアスクは、カバー先のベストビッド(best bid)とベストアスク(best ask)を参考にFX業者が取引方式に応じて決めます。カバー先は、インターバンク市場のマーケットメーカーです。ビッドは、マーケットメーカーの買値で、顧客の立場からすると売値です。アスクは、マーケットメーカーの売値で、顧客の立場からすると買値です。アスクは、オファー(offer)とも呼ばれます。インターバンク市場のスプレッドは、常に変動しますが、アスクはビッドよりも必ず高くなります。これは、スプレッドがマーケットメーカーの取引手数料を反映しているからです。このマーケットメーカーの取引手数料は、取引相手の信用リスクに応じて変わります。ベストビッドは、複数のマーケットメーカーのビッドの中で一番高いビッドです。ベストアスクは、複数のマーケットメーカーの中で一番低いアスクです。
インターバンク市場は、取引場所が決まっておらず、銀行間で相対取引します。この相対取引は、まずマーケットメーカーに価格を聞いて、その価格でよければ取引は成立し、そうでなければ取引は成立しません。マーケットメーカーは、価格を聞かれたらビッドとアスクの両方を答えます。これをツーウェイ・クォーテーション(two way quotation)と呼びます。インターバンク市場の相対取引の状況は、電子ブローキングによってインターバンク市場の取引参加者に瞬時に共有され、ツーウェイ・クォーテーションに影響を与えます。為替レートは、ベストビッドまたはベストアスクが更新されると動きます。この更新は、ベストビッドまたはベストアスクの注文数量がなくなることで生じます。これは、ベストビッドまたはベストアスクの取引成立、注文の変更、注文のキャンセルで起こります。
インターバンク市場のスプレッドが広がる時は、流動性が低い時にベストビッドまたはベストアスクが更新された時です。流動性が低い時は、ベストビッドまたはベストビッドアスク近辺のレートの注文数量が少ないです。この時に大きな注文が生じると、ベストビッドまたはベストビッドアスク近辺のレートの注文数量は全て消化されます。そして、ベストビッドまたはベストビッドアスクは、更新前のレートから離れたレートで更新され、スプレッドは広がります。
ドル円のベストビッド99.70の注文数量が4百万、2番目に高いビッド99.65の注文数量が3百万、3番目に高いビッド99.60の注文数量が2百万、ベストアスク99.71の注文数量が6百万だとします。この時のスプレッドは、0.01です。この状況で7百万の売りの成行注文があると、ベストビッドは99.6、スプレッドは0.11に変わります。
ドル円のベストアスク100.01の注文数量が4百万、2番目に低いアスク100.05の注文数量が3百万、3番目に低いアスク100.10の注文数量が2百万、ベストビッド100.00の注文数量が6百万だとします。この時のスプレッドは、0.01です。この状況で7百万の買いの成行注文があると、ベストアスクは100.10、スプレッドは0.10に変わります。
FXのスプレッドが広がりやすい時間帯は、日本時間の早朝、各国の祝日が重なる時、重要な経済指標の発表時間の前後、大きなニュースが突然入った時などです。また、マイナー通貨ペアは、メジャー通貨ペアよりもスプレッドが広がりやすいです。
インターバンク市場のスプレッドが狭い時は、流動性が高い時です。流動性が高い時は、ベストビッドまたはベストビッドアスク近辺のレートの注文数量が多いです。流動性が高いとベストビッドまたはベストアスクは少しずつ更新され、更新前と更新後の差額が小さいです。また、マーケットメーカーは、大きな注文をしなければならない時は、小さな注文金額に分けて注文し、流動性を低くしないようにしています。この取引はアルゴリズム取引であることが多いです。アルゴリズム取引は、事前に設定したプログラムに基づく自動売買です。
ドル円のベストアスク102.11の注文数量が15百万、2番目に低いアスク102.12の注文数量が34百万、3番目に低いアスク100.13の注文数量が19百万、ベストビッド100.10の注文数量が16百万だとします。この時のスプレッドは、0.01です。この状況で15百万の買いの成行注文があると、ベストアスクは102.12、スプレッドは0.02に変わります。
FXの取引コストを少なくするには、スプレッドが狭い時にベストアスクを約定します。ベストアスクは、ベストビッドよりも必ず高くなります。ベストアスクは、顧客にとって買値です。顧客のスプレッドの取引コストは、顧客の買いの新規注文または買いの決済注文が約定される時に決まります。スプレッドの取引コストの計算方法は、「スプレッド×ベストアスクの約定通貨量」です。例えば、ドル円のスプレッドが0.003の時に10万通貨の買いの新規注文を約定すると、スプレッドの取引コストは300円です。ユーロドルのスプレッドが0.00003の時に10万通貨の買いの決済注文を約定すると、スプレッドの取引コストは3ドルです。
FXの取引方式ごとのスプレッドの違い
FX業者のスプレッドの決め方は、取引方式ごとに違います。FXの取引方式は、店頭取引、NDD(no dealing desk)に大きく分けられます。店頭取引は、原則固定スプレッドと変動スプレッドに分けられます。NDDは、ECN(Electronic Communications Network)とSTP(Straight Through Processing)に分けられます。
店頭取引の原則固定スプレッドは、日本のほとんどのFX業者が採用しています。店頭取引は、顧客とFX業者の相対取引です。原則固定スプレッドは、FX業界の自主規制ルールによると広告したスプレッドの最大値以下のスプレッドを95%以上提示します。しかし、何を基準として95%以上提示とするのかは、決められておらず、FX業者により異なります。原則固定スプレッドは、インターバンク市場の流動性が高い時に提示されるのが一般的です。原則固定スプレッドでない時のスプレッドの提示方法は、FX業者により異なります。原則固定スプレッドは、広告したスプレッドの最大値以下のスプレッドを95%以上提示できなくなると、変動スプレッドに変わります。これは流動性が低い期間が長く続くと起こります。例えば、コロナショック後の約1カ月間は、多くの原則固定スプレッドのFX業者は、変動スプレッドに変わりました。
店頭取引の変動スプレッドは、カバー先のベストビッドとベストアスクの差額にFX業者のスプレッドが加算されます。このFX業者のスプレッドの加算方法は、FX業者により異なります。
ECNは、電子取引所方式で取引参加者同士の注文を自動的にマッチングします。ECNの取引参加者は顧客、銀行、ブローカー(仲介会社)などです。ECNのスプレッドは、取引参加者のベストビッドとベストアスクの差額です。ECNは、マーケットメーカーの注文状況を板情報を通して見れるので、為替レートの透明性が高いです。ECNを採用しているFX業者は、スプレッドに利益を乗せられないので顧客から取引手数料を取ります。
くりっく365はECNです。顧客は、くりっく365を扱う金融機関を通じて取引所に参加する複数のマーケットメーカーの中のベストビッドとベストアスクで取引します。マーケットメーカーは、東京金融取引所に取引振興料を納付しなければならず、そのコストがスプレッドに反映されています。取引振興料の目的は、くりっく365を扱う金融機関が顧客から受け取っている取引手数料を低くまたは無料化しやすくすることです。くりっく365を扱う金融機関は、取引参加料を東京金融取引所に支払います。取引振興料は、取引参加料以上の金額です。東京金融取引所は、マーケットメーカーから受け取った取引振興料をくりっく365を扱う金融機関に支払います。くりっく365は、顧客には取引手数料がかかりませんが、取引振興料のコストが含まれたスプレッドが顧客に提示されます。くりっく365ラージは、取引振興料の対象外でくりっく365よりも狭いスプレッドですが、顧客に取引手数料がかかります。
STPは、NDD(no dealing desk)で顧客の注文を直接カバー先に流します。STPのスプレッドは、カバー先のベストビッドとベストアスクの差額にFX業者のスプレッドが加算されます。このFX業者のスプレッドの加算方法は、FX業者により異なります。また、STPは取引手数料がかかる場合があります。