為替レートが動く仕組み

ビッドとアスクの注文状況

為替レートは、ベストビッド(best bid)またはベストアスク(best ask)が更新されると動きます。ベストビッドまたはベストアスクの更新は、ベストビッドまたはベストアスクの注文数量がなくなることで生じます。これは、ベストビッドまたはベストアスクの取引成立、注文の変更、注文のキャンセルで起こります。

ビッドは、マーケットメーカーの買値で、顧客の立場からすると売値です。アスクは、マーケットメーカーの売値で、顧客の立場からすると買値です。アスクは、オファー(offer)とも呼ばれます。アスクは、ビッドよりも高くなります。ベストビッドは、複数のマーケットメーカーのビッドの中で一番高いビッドです。ベストアスクは、複数のマーケットメーカーの中で一番低いアスクです。マーケットメーカーは、顧客にベストビッドとベストアスクを提示します。これは顧客の立場からすると一番安いアスクで買え、一番高いビッドで売れることを意味します。

インターバンク市場は、取引場所が決まっておらず、銀行間で相対取引します。この相対取引は、まずマーケットメーカーに価格を聞いて、その価格でよければ取引は成立し、そうでなければ取引は成立しません。マーケットメーカーは、価格を聞かれたらビッドとアスクの両方を答えます。これをツーウェイ・クォーテーション(two way quotation)と呼びます。 ツーウェイ・クォーテーションの略記は、ビッドとアスクをハイフン(-)で区切り、オファーの価格の一部のみ書きます。例えば、「100.04-05」は、ビッドが100.04、アスクが100.05という意味です。相対取引の状況は、電子ブローキングによってインターバンク市場の取引参加者に瞬時に共有され、ツーウェイ・クォーテーションに影響を与えます。為替レートの方向性は、この一連の動きが繰り返されることで決まります。

例えば、マーケットメーカーAのビッドが100.04、マーケットメーカーBのビッドが100.03でこれらの注文しかインターバンク市場になかった場合、ベストビッドは100.04です。もし、マーケットメーカーAの100.04の注文数量がなくなった場合、ベストビッドは100.03に更新されます。これは、マーケットメーカーAの注文がすべて成立した場合、マーケットメーカーAが100.03以下に注文価格を変更した場合、マーケットメーカーAが注文をキャンセルした場合に起こります。

マーケットメーカーCのアスクが100.05、マーケットメーカーDのアスクが100.06でこれらの注文しかインターバンク市場になかった場合、ベストアスクは100.05です。もし、マーケットメーカーCの100.05の注文数量がなくなった場合、ベストアスクは100.06に更新されます。これは、マーケットメーカーCの注文がすべて成立した場合、マーケットメーカーCが100.06以上に注文価格を変更した場合、マーケットメーカーCが注文をキャンセルした場合に起こります。

為替レートの動く速さは、注文状況によって変わります。ビッドまたはアスクのどちらかに大量の注文が入り、ベストビッドまたはベストビッドアスク近辺の注文が一気になくなると為替レートは速く動きます。特にベストビッドまたはベストビッドアスク近辺の注文がほとんどない時(流動性が低い時)に大きな注文が入ると為替レートの動きはとても激しくなります。この動きは、為替レートに影響を与える大きなサプライズニュースが出た時や、日本の早朝などの流動性が薄い時にストップロスを狙った短期売買が行われた時などに起こります。

流動性が低い時のビッドトアスクの注文状況

流動性が低い時のベストビッドの更新

ドル円のベストビッド99.70の注文数量が6百万、2番目に高いビッド99.65の注文数量が5百万、3番目に高いビッド99.60の注文数量が3百万、4番目に高いビッド99.50の注文数量が4百万、ベストアスク99.71の注文数量が8百万だとします。この状況で14百万の売りの成行注文があると、ベストビッドは99.5に変わります。

為替レートがほとんど動かない時は、ベストビッドまたはベストビッドアスク近辺の注文がほとんどない時(流動性が低い時)や、ベストビッドまたはべストアスク近辺の注文数量が大きい時です。この動きは、テクニカル的に重要な為替レートの水準で起こることが多いです。

流動性が高い時のビッドトアスクの注文状況

流動性が高い時のベストアスクの更新

ドル円のベストアスク100.001の注文数量が14百万、2番目に低いアスク100.002の注文数量が60百万、ベストビッド100.00の注文数量が30百万だとします。この状況で14百万の買いの成行注文があると、ベストアスクは100.002に変わります。

クロスレートの計算方法

クロスレートはドルストレートを組み合わせて計算します。その理由は、米ドルが世界の基軸通貨であり米ドルとの取引が成立しやすいからです。基軸通貨は一番よく使われる国際通貨です。ドルストレートは通貨ペアの片側が米ドルです。クロスレートは通貨ペアの両側が米ドル以外です。クロスレートの計算方法は、最初にクロスレートの両側の通貨の1米ドル当たりの金額を計算します。これは、ドルストレートから計算できます。ドルストレートの通貨ペアの左側が米ドルであればその為替レートが1米ドル当たりの金額です。ドルストレートの通貨ペアの左側がユーロ、ポンド、オーストラリアドル、ニュージーランドドルであればその為替レートはこれらの1通貨当たり何米ドルになるかを表します。次にクロスレートの右側の通貨の1米ドル当たりの金額をクロスレートの左側の通貨の1米ドル当たりの金額で割ります。

例えば、ユーロ円は、最初にドルと円の1米ドル当たりの金額を計算します。ドル円が100であれば、1米ドル当たり100円です。ユーロドルが1.25であれば、1ユーロ当たり1.25米ドルです。これを1米ドル当たりに換算すると0.8ユーロです(1÷1.25=0.8)。次に円の1米ドル当たりの金額をユーロの1米ドル当たりの金額で割ります。ユーロ円は、125円です(100÷0.8=125)。これは1ユーロ当たり125円という意味です。

為替レートの変動要因

為替レートの変動要因となる取引は、大きく分けると実需、投機、介入です。実需は貿易取引、資本取引です。資本取引は証券投資と直接投資が中心です。為替ヘッジをしている場合、資本取引は為替レートの変動要因ではありません。資本取引と投機は投資資金を回収するときに反対売買をするので、投資期間に応じた為替レートの変動要因です。貿易取引は反対売買をしないので長期的な為替レートの変動要因です。

為替レートを見て悩む人

為替レートに影響を与える取引

2019年1月22日